ウォーミングアップのあと、ぶつかり稽古への流れ。
四股
太ももの裏側、臀部、腹筋、そして足裏の筋肉まで増強する。古の力人の英知が詰まった稽古法。大鵬は若手時代に毎日500回ふんだ。大東流合気柔術の達人、佐川師範は仕事で海外出張する弟子に『四股だけでいい。ただし毎日千回』を課した。その弟子はその鍛錬で、今まで投げれなかった大きな外国人を投げとばせるようになった。空手の稽古時、時々四股をふむ。先日時間を計ると40回で4分半だった、30回もすれば全身があたたまる。
てっぽう
右足を出したら右腕、左足の時は左腕を出す。押す力を養うと同時に、相撲の基本の体さばき、足運びを骨身にしみこませる。大鵬は毎日2千回。他スポーツに見られない体の使い方で、有名なのが「なんば歩き」、空手では「追い突き」だ。追い突きは全ての要素を含んだ空手の突き、かつ最も威力がある突きである。
すり足
取材時、白鵬の両足親指の根本付近、少しふくらんだ部分がうっすらと血がにじんでた。白鵬笑いながら、
「ここに傷ができる人は相撲うまい人だって、昔よくほめられたけどね。ちゃんとこう、足が外に向けてる、つま先がね。こう、外にそっちゃうわけですよ。ハの字ね」。
申し合い
勝った力士が相手を指名してとり続ける。勝ち抜き戦だから勝てないといつまでも土俵にあがれず稽古量がへる。何とか勝とうとしているうちに強くなるというもの。見るのも稽古。
ぶつかり稽古
ぶつかる側と受ける側がきまっていて、ぶつかる側は渾身の力で受け手にあたり、そのまま両はずで土俵の端から端まで一直線に押す。何番も何番も、息が上がるまで。普通は5分で息があがるが20分、30分に及ぶことも。受ける側も大変で肋骨を折ることもあるというから真剣。
ぶつかる側はもちろん、受け側も相手の力の流れ、受けるタイミング、角度など、もろもろを肌で感じる重要な稽古になろう。無門会空手の約束組手~約束自由組手がこれにあたる。
立ち合いほか技を思考、試行
究極の立ち合いとは何か。腰の割り方、両足の幅、足を開く角度、コブシをつく位置、そのタイミング、相手にあたる角度。計算要素はありすぎるほどある。数知れぬ試行錯誤。『立ち合いは勝負の8割を決める』は大鵬が残した言葉。
2014年秋場所3日目、啓示を得たように『立ち合いのひらめき』があったと白鵬。
「その日の朝稽古でね、相手は山口だね」立ち合いの重量感が増した、これだと。その日の取組で即座に実行。「照ノ富士戦ね、当たる感触が変わった」鋭い踏み込み、瞬時の右差し、左上手。すかさず右のかいなを返し、走った、寄り切り。
これらを細かく記憶しているところが凄い。相撲バカ、求道者の姿勢に、感動する。横綱はやっぱこうでなくっちゃ、と独り満足(笑)
朝田武蔵というジャーナリストが丁寧に取材、ロングインタビューで白鵬のそれに迫ってくれた『白鵬伝』と、彼の自著や実際の取組み(Youtube)を参考に、テーマを何回かに分けて書いてみる
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